連載 臨床で役立つ末梢神経病理の読み方・考え方・6
ビタミン欠乏性ニューロパチーとアルコール性ニューロパチー
佐藤 亮太
1
,
神田 隆
1
1山口大学大学院医学系研究科臨床神経学
pp.1019-1024
発行日 2019年9月1日
Published Date 2019/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201395
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はじめに
1960年代,ビタミンB1が添加されていないインスタント食品の流行によって,西日本を中心に多くの若者が脚気に罹患した。
ビタミンB1以外にもビタミンB2,B12,葉酸,ビタミンEの欠乏や,ビタミンB6の欠乏および過剰によって末梢神経が障害される。本邦では飢餓による栄養失調患者に遭遇する機会は少なくなってきたが,いまだに栄養状態の悪いアルコール依存症患者には,しばしば遭遇する。また,飢餓や偏食がなくても,外科手術や薬剤の副作用によってビタミンの吸収が阻害され,ビタミン欠乏性の末梢神経障害をきたす例は少なくない。
実際の臨床では,ビタミン欠乏やアルコールによるニューロパチーに対して,腓腹神経生検は不要と判断されることが多いが,これは腓腹神経病理所見を含めたビタミン欠乏性/アルコール性ニューロパチーの知識が十分に身についていることが大前提である。適切な鑑別診断ができなければ,長期間にわたって不要なビタミン投与や断酒のみを漫然と継続してしまい,結果として背景にあるアミロイドーシスなどの難治性の末梢神経障害を見逃し,重篤な末梢神経障害を招きかねない。
連載第6回となる今回は,代表的なビタミンB1とB12の欠乏によるニューロパチー,アルコール性ニューロパチー,および複合型ビタミン欠乏性ニューロパチーの腓腹神経病理を解説する。
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