連載 臨床で役立つ末梢神経病理の読み方・考え方・7
糖尿病性ニューロパチー
佐藤 亮太
1
,
神田 隆
1
1山口大学大学院医学系研究科臨床神経学
pp.1107-1112
発行日 2019年10月1日
Published Date 2019/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201414
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はじめに
糖尿病性ニューロパチーが網膜症や腎症と並ぶ糖尿病の3大合併症として位置付けられていることは周知のとおりである。糖尿病は中国,米国,インドなどで特に多いと言われてきたが,最近の国際糖尿病連合の報告によれば1),発展途上国を含めて世界的に糖尿病患者数は増加している。
日本の糖尿病患者数は既に1000万人を超えており,Ⅰ型糖尿病では罹患15年で100%,Ⅱ型糖尿病では罹患25年で30%が糖尿病性ニューロパチーをきたすとされている。糖尿病性ニューロパチーの克服はわれわれ脳神経内科医にとって重要な課題であることは言うまでもないが,これに加えて,多くのニューロパチー患者が糖尿病を合併しているという時代にわれわれは直面していることを常に念頭に置きたい。糖尿病患者で慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy:CIDP)が多数見られることはよく知られているが,個々の糖尿病患者のニューロパチーが糖尿病性ニューロパチー単独で説明できるか,実は糖尿病を合併した他のニューロパチーであるか,といった判断が常に求められるのが臨床の現場である。
現在,糖尿病性ニューロパチーそのものを診断する目的で腓腹神経生検が行われることはない。しかし,上記の目的を達成し,質の高い臨床を行う意味で,糖尿病性ニューロパチーの腓腹神経病理の知識を正しく身につけておくことは大きな意義があると筆者は考えている。そこで,連載第7回となる今回は,糖尿病性ニューロパチーに特徴的な腓腹神経病理所見を提示する。
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