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あとがき/読者アンケート用紙
河村 満
pp.874
発行日 2017年7月1日
Published Date 2017/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200837
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私が大学5年生のとき,第2内科(循環器内科など)のポリクリで初めて患者さんを診察したときのことを今でも鮮明に覚えています。私の母校横浜市立大学にはその頃神経内科はなく,内分泌疾患も神経疾患もその科で診ていたのです。私が初めてお話を伺った患者さんは1人がバセドウ病の30代の女性,もう1人はパーキンソン病の50代後半の男性でした。眼球突出のある女性は,汗をかきやすいことや時々動悸がするということを,こちらが聞くまでもなくどんどん話してくださいました。一方,パーキンソン病の患者さんは寡黙でしたが,前傾前屈の姿勢で入室し小刻みに歩き,すくみながら椅子に座り,右手に静止時振戦がみられ,対座すると仮面様顔貌でした。お2人とも講義で習ったとおりの典型例で,学生の私でも診断はすぐにつけることができました。
しかし,パーキンソン病の典型的な静止時振戦は全例でみられるわけではなく,類似の疾患が数多くあり,この病気の臨床診断が決して簡単ではないことは,後に神経内科医になって改めて知ることになりました。バセドウ病も血液検査で甲状腺機能を調べれば診断可能なので,もう診断に迷うことはあまりない,と実は思っていたのですが,実際には難しいこともあることを最近知りました。それは30代後半の女性で,主訴は「朝固まることがある。時々全身の脱力感がある」というものでした。「内科的には何も異常がないと思いますが,神経内科的に念のためご診察いただけますでしょうか」という総合内科医の紹介状をお持ちでした。
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