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連載 神経学を作った100冊(86)
ティネル『神経外傷――戦争外傷による末梢神経障害の症候学』(1918)
One Hundred Books which Built up Neurology (86)-Tinel J (translated by Rothwell F, Joll CA): "Nerve Wounds. Symptomatology of peripheral nerve lesions caused by war wounds" (1918)
作田 学
1
Manabu Sakuta
1
1日本赤十字社医療センター神経内科
1Department of Neurology, Japanese Red Cross Medical Center
pp.198-199
発行日 2014年2月1日
Published Date 2014/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101726
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ティネル(Jules Tinel;1879-1952)は,フランスの神経学者である。ノルマンディー地方のルーアンで生まれ,当地の学校に通った。彼はパリに出て医学を学び,1901年にはエクステルヌ,そして1906年にはアンテルヌ(病院住み込み医師)となった。彼は特にデジュリーヌ(Joseph Jules Dejerine;1849-1917)に影響を受けて神経学の道に進み,1910年に「神経根炎と脊髄癆」で学位を取得した。1911年にはパリのサルペトリエール病院の病棟医長(chef de clinique),そして1913年には研究室長に昇進し,1914年にはル・マンにある神経センターの部長になった。
1915年10月7日に,今日ティネル徴候と呼ばれている末梢神経再生の徴候を初めて論文に書いた1)。これとは別にドイツではヴュルツブルグ大学病院のホフマン(Paul Hoffmann;1884-1962)が1915年3月28日に同じ現象を論文にしていた2)。ドイツとフランスは戦争中ということもあり,お互いにまったく研究の交流はなかったと思われる。ホフマンの論文は神経縫合術後の回復の有無を,縫合部から遠位側の神経の上を指で叩打し,チリチリする感覚が起こるか否かで診ることができるとするものだった。
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