社会の動向
戦争と戦争文学というもの
長谷川 泉
1
1医学書院編集部
pp.42-43
発行日 1958年7月1日
Published Date 1958/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201508
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フルシチヨフがソ連の首相になつて,ソ連の外交政策はすべてに攻勢的,積極的である.ブルガーニンが首相の時の比ではない.もつとも,ブルガーニンがロボツト首相であることは周知の事実であつたから,背後にあつて糸を操つていたフルシチヨフが表面に出て来ようが来まいが,ソ連の政策には実質的に変化がないとは言えるのだが,それにしてもフルシチヨフが,かつてのスターリン以上の実力者として名実共に表面にあらわれて来てからというもの,どうもソ連のやりかたは派手である.
フルシチヨフは文字通り独裁者になつた.スターリンの死後,集団指導制などといういかにも民主的なお題目をとなえたのは,この人であつたかと目をみはらざるを得ないような変りかたである.だが,それが歴史の現実というものであろうか.スターリンの死後,独裁者の座を待ちもうけるかの如き発言をしたら今日のフルシチヨフの位置は無かつたであろう.とすれば,極めて実践的な柔軟な思考と方法を,フルシチヨフはとつて今日の座にすわつたと言える.
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