- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
2003年3月20日,とうとうアメリカがイラクへの攻撃を始めました.胸の痛むニュースでした.そして,約3週間におよぶ激しい戦闘後,アメリカ軍がバクダッドを制圧したことで,“民衆の解放”を成し遂げた(確か攻撃を始める前にはイラクが隠し持っているという大量破壊兵器を見つけ出すことが目的だったはずなんだけど……)と,一応の決着は着いたかのようになりました.でも,どうでしょう? 多くのメディアが伝えているように,バクダッドの制圧,民衆の解放は“はじまり”でしかないような気がするのです.それも何か不安を感じさせるような未来のね.メディアで報道されている場面というのは,実際にそこで起きていることのほんの一部です.
◆カンボジア人にとってのイラク攻撃
カンボジア人にとっても,このニュースは衝撃的だったようです.テレビから流れる子どもの泣く姿,怪我を受け苦痛の表情を見せる患者たちや,まるで映画でも観ているかのように思わせる激しい戦闘の映像を観て,彼らはさまざまな反応を示しました.口を閉ざしてしまうカンボジア人,また,「昔を思い出して,自分がその場にいるみたいな気がしてくる」「あの爆弾が落ちてくる音が聞こえてくる気がする」などと不安な表情をしながら話しているカンボジア人.いずれにしても彼らにとっては,それほど遠くない彼ら自身の過去の経験を思い出させるものだったようです.
私にとって戦争は,日本にいたときに,1年に1回,原爆の日に実感する程度でした.でも,ここカンボジアへ来て,それはより身近なものになってきたと感じます.街の中には戦争で足や手を失ったハンディキャップの人たちがたくさんいますし,つい数か月前には病院の隣にある高校の敷地内で,以前武器倉庫として使われていた場所から大爆発が起こりました.病院から数km離れている自宅にいた私にもその爆音はズシーンと内臓に響くように聞こえ,一瞬「ぞーっ」としたほどです.病院の敷地内にはその破片が飛び,病院の屋根を壊すほどでしたし,院内にいたスタッフたちは爆風で胸を思いっきり抑えられたように感じたといっていました.街は平和になり,観光客がたくさんやってくるようになったとはいえ,いまだにその戦争の傷跡をあちらこちらで目にすることがたくさんあるのです.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.