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あとがき
水澤 英洋
pp.456
発行日 2010年4月1日
Published Date 2010/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100676
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傍腫瘍性症候群,より正確には傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurological syndrome:PNS)とは,悪性腫瘍に伴う神経障害のうち腫瘍の直接浸潤・転移,栄養障害,日和見感染,治療の副作用などを除外したいわゆる遠隔効果よるものをいうが,最近では,主に抗神経抗体に関連した免疫介在性のものに対してよく用いられる。
皮膚筋炎と悪性腫瘍,重症筋無力症と胸腺腫,小脳変性症と肺小細胞癌など悪性腫瘍と神経疾患の関係は古くから知られてはいたが,そのメカニズムはよくわかっていなかった。しかし,その後抗神経抗体の同定や免疫治療の発展が続き,現在ではPNSは神経学において1つの大きな領域を形成するに至っている。個人的には1980年代後半から,相次いでstiff person症候群とIsaacs症候群の症例を経験し,血漿交換による劇的な改善を目の当たりにして大変感動したことをよく覚えている。当時はまだ両疾患ともPNSとしてはポピュラーでなく,抗GAD抗体はYale大学まで送って検査してもらったり,抗VGKC抗体もまだ生物学的検査しかできず患者は英国まで行き故Newsam-Davis教授にみてもらっていた。
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