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あとがき
水澤 英洋
pp.1142
発行日 2011年10月1日
Published Date 2011/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101043
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今月の特集は「緩徐進行性高次脳機能障害の病態」である。文字どおり,緩徐進行性の高次脳機能障害すなわち失語,失認,失行の病態についての特集ということになる。緩徐進行性(slowly progressive)とは,原発性進行性(primary progressive)ということであり,例えば,脳腫瘍によりゆっくりと進行する場合などは含まれない。換言すれば,緩徐に進行する神経変性疾患としての失語,失認,失行などを意味する。この概念は,1982年にMesulamが緩徐進行性失語を呈した症例を報告し,その後,この病態は原発性進行性失語症(primary progressive aphasia:PPA)と呼ばれたことに始まる。このポイントは,それまで失語といえば,脳血管障害による大脳皮質の局所的な障害によると考えられていたところに,神経変性疾患でも大脳皮質が局所的に障害され失語が生じ得ることを示したことにある。これは,神経変性疾患といえば大脳皮質が広汎におかされるAlzheimer病,黒質線条体系が左右ともに障害されるParkinson病,運動ニューロン系が広汎に障害される筋萎縮性側索硬化症,小脳が広汎におかされる脊髄小脳変性症などしかなかった当時としては,極めて限局した部位の神経変性が生じ得ることを明確に示したこととして,画期的であった。
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