糖尿病診療における健康食品の影響

Effects of health foods on diabetic patients

はじめに

　近年，糖尿病を含めた生活習慣病の増加に伴う健康志向の高まりから，健康食品の需要が増加しており，健康食品市場は年間約1兆9千億円と言われている^1）．しかし，その一方で，このようなニーズの高まりに対し，効果について必ずしも科学的根拠が十分でない情報が誇大広告を含めて流通するなど，健康食品を適切に利用することが困難な状況も生じている．実際，日本には健康食品やサプリメントについての包括的な法律がなく，健康食品の摂取に伴う健康被害事例が報告されている^2）．また，健康食品の中には医薬品と併用することで医薬品の吸収や代謝を促進したり，阻害するなどして，医薬品本来の治療効果が得られず，症状を増悪させるなどの問題が生じうる^3）．そこで本稿では，近年その利用が確実に増えている健康食品の糖尿病診療に及ぼす影響と今後の課題について，具体的な症例を提示しながら概説する．

　なお，本稿で扱う健康食品とは，保健機能食品（国が有効性と安全性を評価した食品：特定保健用食品と栄養機能食品）とサプリメント（医薬品や保健機能食品のような規制がない：いわゆる健康食品）を含む．