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はじめに
糖尿病下肢病変の発症機序は内的因子と外的因子に大別される.外的因子として靴擦れ,熱傷,凍傷,不慮の打撲,切創,異物そのほかによるものがある.患者さん自身が下肢の皮膚のバリーヤー損傷をきたす状況として,爪切りでの深爪,皮膚掻痒に対しての爪での擦過,衣服での擦過による蜂窩織炎や下肢リンパ液の還流障害によるジーパン症候群(Tips 1)やナイロンタオルでの摩擦による蜂窩織炎などがある.
民間療法,伝統療法,健康療法その他国により異なる方法があり,その治療を施行したことで起こる糖尿病下肢病変に焦点を絞って解説する.美容で人気のある韓国式エステでの皮膚の強い摩擦は糖尿病患者には感染症をきたす危険性がある.
筆者の経験では鍼灸,モグサ,お灸そのほかがある.病変が比較的限局し大事に至らない例もあるが,病変部の感染症併発で足壊疽にいたる例も稀にあるため注意が必要である.足のもみほぐしやマッサージも注意が必要である.筋肉損傷,筋膜や腱の損傷をきたす例もある.高齢車の場合器具(木,プラスチック,金属など)での圧迫や摩擦で皮下出血をきたすことがある.皮膚の脆弱性があるため起こりやすい.また,高齢者や高度動脈硬化症を背景とする狭窄や閉塞病変例に対して,抗血小板療法や血管拡張薬などの内服例は注意が必要である.針や打撲で皮下血腫を形成することがある.また糖尿病患者で慢性関節リウマチを含む膠原病,気管支喘息を含めた呼吸器疾患,臓器移植例でのステロイド使用例や免疫抑制剤使用例は注意が必要である.
先に挙げた爪切り,足の皮膚のかさかさを自分で剥離したり,角質増殖部の自己処置での感染症も併発しやすいため,鍼治療や熱傷を誘発するような治療は控えるべきである.また糖尿病神経障害,腎障害,心不全,肝硬変その他で足の浮腫例も容易に皮膚の破綻が軽微な外力で生じやすい.また,下肢循環障害,更年期障害,脊椎疾患や高度のやせ例での足の冷え例は熱源での接触しやすく,熱傷に罹患しやすいため,熱湯にタオルや手ぬぐいを絞ったものの接触は危険である.
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