特集 「…血が出たんです」―肛門・会陰部出血へのアプローチ―
【スペシャル・アーティクル】
抗血小板薬・抗凝固薬を使用中の患者―肛門,会陰に出血があったらどうする? 痔疾治療をどうする? 大出血のリスク管理や出血時の対応
森 興太
1
,
矢坂 正弘
1
1国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科
キーワード:
抗血栓療法
,
橋渡し療法
,
急性期出血時の対応
Keyword:
抗血栓療法
,
橋渡し療法
,
急性期出血時の対応
pp.754-758
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102626
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Case
生検に伴うワルファリン休薬で重篤な脳梗塞をきたした1例
症例:74歳,女性.
病歴:高血圧,糖尿病,非弁膜症性心房細動の診断でワルファリン療法を受けていた.血便を主訴にA病院に入院となり,下部消化管内視鏡検査を施行したところ,大腸にポリープを指摘された.確定診断のために生検が必要と判断され,同日よりワルファリン内服が中止となった.ヘパリンへの橋渡し療法は行わなかった.前日の検査にてPT-INRが1.05まで低下しており,検査当時の朝,看護師が前処置のために訪室したところ,ベッドサイドで倒れている患者を発見し,当科紹介となった.
経過:意識障害と右完全片麻痺,および重度の失語を呈しており,左中大脳動脈の脳梗塞と診断し,頭部MRIで同部位の大きな梗塞巣を確認した.保存的加療で一命は取り留めたが,重度の失語および右上下肢麻痺が残存し,回復期リハビリに転院となった.転院の際,家族から「脳梗塞予防のためにワルファリン療法を行っていたのに,どうして脳梗塞を起こしたのでしょうか? とても残念です.」と言われた.周術期の抗血栓薬管理の重要性を考えさせられる一例であった.
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