メディカルエッセイ
印象深いインディアナパウチ造設患者
坂 義人
1
1岐阜大学医学部泌尿器科
pp.62
発行日 1998年3月30日
Published Date 1998/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902268
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患者は現在73歳の男性で,性格は研究心が旺盛で何事にも熱心に取り込むところがある。1991年に膀胱腫瘍と診断し,TURなどの治療を行っていたが再発したため,1992年12月に膀胱全摘除術およびインディアナパウチ造設術を施行した。術前に,術後はできるだけ早く体を使うよう勧めたためか,手術翌日には自力歩行でトイレに行くほどがんばり屋で,術後もきわめて順調に経過して退院していった。導尿カテーテルは退院時にわたしてあったが,その後自分に合ったカテーテルを求めてあれこれ試し,チーマンカテーテルがよいことはわかったが,同じチーマンでも材質により先端の堅さや曲がり具合,腰の強さ,滑り具合等々が異なっており,ようやく気に入ったものを探し当てて以来,ずっとそのカテーテルを使用している。
術後半年ほどしたある日,突然強い腹痛を訴え緊急入院した。よく話を聞いてみると,薬剤(カプセル)を服用した際に,カプセルを包装シールから取り川さずに,包装シールごと服用してしまったかもしれないという。しかし,患者はカプセル剤の服用には慣れており,今回本当にそのようなことがあったのかはっきりしないともいう。早速,腹部のX線写真を撮ってみたところ,やはり包装シールを思わせる長方形の陰影がくっきりと描出され,またイレウス状態であったため開腹して一部の腸管とともに摘出した。あれだけ堅く,角が尖ったシールでも,総入れ歯のためか痛みはまったく感じなかったそうである。
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