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われわれの周囲のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)には笑ってしまうようなフェイク情報が溢れています.シャンプーで洗うだけでその後は一生白髪がなくなったり,皮膚に塗るだけでシミがとれて美白になったりの広告がSNSのそこかしこにみられます.フェイクニュースは虚偽報道であり,マスメディアやソーシャルメディアなどの媒体において事実と異なる情報を報道すること,またはそのような報道そのものを表します.初めから虚偽であることを認識したうえで行う架空の報道や,推測を事実のように報道するなど,故意のものについては捏造報道といわれることもあるようです.外来などで健康食品やがん治療の補助食品などなど患者さんが目にしたり耳にしたものを先生方に質問されることも日常的にあると思います.こういったフェイク情報には困ったものです.
今年も9月14日にユニークな奥深い研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」が発表されました.イグ・ノーベル賞は1991年にイスラエルの科学関係雑誌「The Journal of Irreproductive Results(再現不能な結果雑誌)」の編集者エイブラハムズによって創設されたノーベル賞のパロディで,現在は米国の化学雑誌が主催しています.これも創設時はフェイクっぽい賞だったのですが,現在ではユニークな研究を対象にしているようです.今年のイグ・ノーベル賞では,日本の研究者による「箸やストローで電流を流して味覚を変える」が「栄養学賞」を受賞しました.日本人研究者の受賞は実に17年連続となります.以前から電流刺激で味覚が変動することが知られていましたが,食事の際にその効果を活用できるように食器に電流を流すことを思いついたことからこの研究は始まっています.微弱な電流が流れるストローや箸を使って飲み物や食べ物を口にすると,塩味が強まったり,味に変化が出ることを確認し味覚を変える手法として論文化しています.これにより,減塩食が苦もなく食べられたりする時代が来るかもしれません.これらにより満腹感の得られる箸などができれば,胃のスリーブ手術の必要もなくなるかもしれません.
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