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あとがき
T.M,
pp.384
発行日 1988年4月20日
Published Date 1988/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204736
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「人生はドラマだ」とよく言われるが,科学の世界をみてもその通りである。私達が日常何気なしに理解している人体や病気についての知識,あるいは診療手段として使っている医療用具など,これらが成熟してきた背景には,興味がつきない足どりが集約されているものである。科学技術の新しい進展と開発は,きわめてロマンに満ちた知的な挑戦であり,それだけに歓喜,失望,興奮,苦悩といった人間的なドラマが展開されたに違いない。
泌尿器科学を特徴づける診断・治療技術の一つに内視鏡があるが,この生体内をのぞきみる器具の歴史にも多くのドラマがあったはずである。17世紀に無学な服地屋のレーウェンフックがレンズから顕微鏡を作り上げたことに始まり,約100年前のニツチェの膀胱鏡,1969年以来のファイバースコープによる上部尿路内視鏡開発,それらには単なる知的好奇心を超えた冒険心がなかったら成功しなかったであろう。今日,腎尿管用ファイバースコープは,観察用から治療への応用が急速に広がっている。上部尿路内に体外より光をともすことを可能にした技術は,これからも一層多様な技術的改良が加えられ,臨床医学の上に大きなドラマが起こるにちがいない。今月の綜説「腎・尿管用ファイバースコープ」は世界で最初にこのスコープを試作した阿曽教授にご執筆戴いたが,内視鏡の今後の発展の方向を示唆する有意義な綜説である。
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