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日本呼吸器学会は,2013年4月に「COPDガイドライン第4版」を上梓した.この特集では,ガイドラインの特に病態に焦点を当てて,斯界でご活躍の8人の先生方に解説いただいた.永井厚志先生は,このガイドラインは,「COPDの最新の情報を詳細に記載することにより,COPD医療の発展を期するものである」とされている.橋本修先生らは,1961年に唱えられた「気管支喘息とCOPDは共通の遺伝子素因を共有し,環境因子によって異なる表現型を示す」というオランダ仮説は,一時否定されていたが,近年の分子レベルの研究から支持する報告も出始め,トピックになりつつあるとされている.松元幸一郎先生は,禁煙COPDにおいて,感染後炎症が自己免疫的な反応を誘導して慢性炎症をもたらす可能性があるとしておられる.峰松直人先生らは,マクロファージM2は,高いプロテアーゼ活性,低い組織修復能を特徴として組織改編を助長し,遺残物に対する貪食能の低下が炎症物質の維持に関与するとしておられる.花岡正幸先生は,COPDの慢性炎症の主役であるリンパ球が,遺伝子再構成や免疫記憶を伴う獲得免疫に関与してCOPDの病勢が進行するとされている.辻隆夫先生らは,COPDでは,SASP(炎症性サイトカインなど様々な液性因子を分泌するフェノタイプ)を獲得した肺胞上皮細胞や血管内皮細胞が長期に存在し,慢性炎症を引き起こすとされている.金澤實先生は,CPFE(肺気腫合併肺線維症)は,労作時低酸素血症や,肺高血圧症・肺癌の高率な合併を特徴とし,診断基準の作成が今後の課題であるとされている.檜澤伸之先生は,COPDと喘息のオーバーラップ症候群に対しては,CCL5,IL-17Fなどが自然免疫系を活性化することにより,喘息やCOPDの病態に重要な役割を果たしているとされている.
この特集をお読みになって,COPDの病態に対する理解を一層深めていただければ幸いである.
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