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本号の特集テーマは「抗凝固薬の新展開」です.新しい抗凝固薬である,抗トロンビン薬やⅩa阻害薬は,最近登場した循環器系薬剤のなかでは,最も注目されている薬剤の一つでしょう.抗凝固薬といえば,今までワルファリンしかありませんでした.ワルファリンも大変よい薬であり,心房細動や深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症,さらには人工弁や人工臓器が入った患者にとってはなくてはならない薬でした.しかし古い薬だけに欠点も多く,使いにくかったのも事実です.何より効果が人により異なり,また同じ人でも効果が変動するといった問題がありました.したがって服用していても十分効いていなかったり,逆に効きすぎて出血を起こすことも稀ではありませんでした.高齢者人口の増加により,わが国でも心房細動患者が急増しています.脳梗塞を減らすためには,本来はほとんどの患者がワルファリンを服用したほうがよいのですが,副作用として脳出血があるので,リスクの高い患者しか抗凝固療法をしていないのが現状です.またワルファリンは,ビタミンKによって効果が低下するので,納豆好きの人にはつらいでしょう.今回登場した新しい抗凝固薬は,ビタミンKの影響を受けないので,食事の影響が少なく,人によっても効果の差が少ないので,皆同じ量でよいといった利点があります.また出血のリスクも少ないので,より多くの患者が適応になる可能性があります.ただし副作用のない薬はありません.適切な使用法をして初めて新しい薬も効果を発揮します.本特集は新しい抗凝固薬について,現時点での情報がわかりやすくまとめられています.新しい抗凝固薬の効果が十分発揮され,多くの患者にとって有用性を発揮することを期待したいと思います.
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