特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅳ 開腹手術
■尿道の手術
110 瘢痕組織が厚く吻合できそうにない
加藤 晴朗
1
Haruaki Kato
1
1信州大学医学部泌尿器科
pp.296-297
発行日 2011年4月5日
Published Date 2011/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102358
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Q 後部尿道断裂に対して端々吻合を予定して手術を開始した症例。会陰切開で球部尿道は十分剝離できたが,断裂部の瘢痕組織が厚く,前立腺尖部を十分露出できず,吻合できそうにない。
[1]概 説
外傷による後部尿道断裂は,たいていは骨盤骨折に伴う。成人では膜様部尿道付近が多いが,小児では前立腺が発達していないので,前立腺部(後部)尿道で断裂することもある。急性期は恥骨上膀胱瘻で尿路は管理される。骨盤内の血腫や尿囊腫により断裂部位の頭側の膀胱前立腺は骨盤内で挙上されるが,血腫などが吸収されるに伴い,また元の位置付近に戻ってくる。したがって,後部尿道形成術(端々吻合術)は,血腫の吸収や炎症の消退する,少なくとも3か月以降に行われる。
手術は簡単にいえば,球部尿道と前立腺尖部の健常部とを端々吻合する。しかし,断裂部には血腫の吸収に伴う強固な瘢痕組織が介在し,断裂部の距離もさまざまであり,これが断裂部を端々吻合する際の大きな妨げとなる。前立腺の尖部も直腸方向や正中からずれていることも多く(偏位),これも会陰から前立腺尖部への到達を困難にする原因となる。また,骨折した恥骨片が,ちょうど吻合部付近を圧排していることも多く,吻合の妨げとなることが多い。
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