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2月号の編集後記で,泌尿器科学の学際性について私見を述べさせていただきました。要旨は,泌尿器科という診療科は規模の小さな診療科でありながら,多彩な疾患を幅広く扱っている。学問分野として分類すると,腫瘍学,腎臓病学,透析医学,移植学,神経生理学,生殖医学,内分泌学などから成り立つ「総合医学」であるという考えです。内科学,外科学がより専門性を追求し,分散していく傾向があるようにみえます。例えば,乳腺科,糖尿病センターという名称からも推察されます。ところが,泌尿器科においては,前立腺癌の術後におけるEDの薬物治療や,精巣腫瘍での精子保存など,泌尿器科の中で,腫瘍学と生殖医学などが連携する構図が存在します。泌尿器科医はさまざまな学問分野を統括しながら日常臨床を行っています。泌尿器科は総合医学に立脚した診療科ではないでしょうか。
こういう考えを持つ私にひとつの記事が目に留まりました。泌尿器科紀要55巻第1号に掲載されている,岡山大学公文裕巳教授と京都大学小川 修教授の対談です。公文裕巳教授は本年の日本泌尿器科学会総会を主催されます。泌尿器科紀要の編集委員長である小川修教授と来るべき総会について対談されました。メインテーマは「泌尿器科学:変革と未来力」であり,「変革」について公文教授は,泌尿器科が「前立腺肥大症を中心にする男性専科から,人生80年時代のカップルライフを支援する総合臨床科になった。」と述べておられます。「未来力」については,「コメディカル専門職との連携が進みつつあることを重要視すべきで,高齢化日本のQOLを改善するチーム力を結集して,泌尿器科学のあるべき姿を実現していく融合的未来力が求められている。」と解説されています。この考えは,患者の目線に立ったときに,泌尿器科は総合医療として位置付けられるべきであり,そのあるべき姿の追求には,融合がキーワードであるということだと私は解釈しました。私が学問分野を設定することによって感じ取った泌尿器科における学際性は,「融合」というキーワードと置き換えることも可能です。私は学問からのアプローチ,公文教授は診療からのアプローチ,登山口は違っていても頂上は同じところを目指しているような感があります。
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