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こんなにあっという間に過ぎた1年は経験したことがない.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い,当初は感染拡大予防効果に疑問符がついていたマスク着用にも,すっかり慣れた.勤務先の大学のグラウンドは無料で使用できる駐車場として車通勤を希望する職員に開放された.そこで,通勤電車での密を避けるため久しぶりの車通勤を再開した.車に乗って,歩道を歩いている人を見渡すと,ほとんどの人がマスクを着用している.ほとんどひとけのない歩道を夜に歩くときにもちゃんとマスクをしている.海外でマスク着用義務化に反対する人たちがニュースで報じられるのをみるにつけ,「日本人は本当に真面目だ」と改めて感心する.一方で,感染拡大当初は診察室に入ってくると,荷物を荷物置きに置くと同時にマスクをわざわざ外して,お話をされようとする患者さんもいらっしゃった.理由はさまざまである.患者さんの中にはマスクをしたまま話をすることを失礼だと考え,「マスクをつけたままで失礼しますね」とことわってくださる高齢の患者さんもいらした.おそらくマスクのまま診察を受けることは,帽子を被ったまま診察を受けるような,そんな違和感を感じられたのかと推測する.診察した患者さんのCOVID-19感染があとから判明した場合,そのときの診察状況によっては,自分が濃厚接触者とされ,2週間の出勤停止になりうるため,診察室でマスクを外された患者さんに対しては,基本的にマスクの再装着をお願いする.患者さんはみなさん,協力的である.一方で,一時期から脂漏性湿疹,酒皶,痤瘡,アトピー性皮膚炎などの湿疹が,明らかにマスクによって被覆される皮膚に一致して増悪する患者が増えた.他施設の皮膚科の先生も同様の患者さんを経験されていると聞いた.原因と対策について,本号に大変わかりやすく書かれていて,勉強になる.使えるようになった新規薬剤,ガイドライン改訂もこの1年であった.COVID-19はもちろんだが,疥癬,真菌,黄色ブドウ球菌など,私たちが学ばないといけない皮膚感染症の話題もある.先生方の臨床に役立つ新規のお仕事ももりだくさん.本号を読んでいたら,いい意味であっという間に時間が過ぎた.
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