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ちょうどこのあとがきを書いている今,新年度が始まったばかりです.今年も多くの留学生や若手医師との対話の機会に恵まれ,日々の臨床や教育の中で,医療の原点を再確認する場面が幾度となくありました.彼らの「なぜこの疾患がこうなるのか」という素朴な疑問に触れるたび,私自身も忙しさに流されがちな「探究心」や「まなざし」の大切さを思い出させられています.この一年も,皮膚科領域では多くの新しい報告がありました.医療の現場では依然として高い感染力を誇るCOVID-19の影響が残るなか,AIやデジタルヘルスの進展はますます加速しており,診療や研究のあり方にも大きな変化がもたらされています.皮膚科においても,画像診断支援AIの精度向上や遠隔診療の拡充が議論されるようになり,われわれの診療現場にもこれまで以上の柔軟性と判断力が求められる時代に入ったと実感しています.ダーモスコピーに関しても,これまで蓄積されてきた知見を基盤としながら,診断に役立つ新たな情報が引き続き発信されています.今後は,機器の解像度や操作性の向上により,診断精度のさらなる向上が期待できるように思われます.研究分野に目を向けると,シングルセル解析や空間トランスクリプトーム解析が,もはや特別な技術ではなく,日常的に用いられるようになってきました.もちろん,解析コストの高さは依然として課題ですが,その分得られる知見の質と深さには目を見張るものがあります.さらに,マイクロバイオームや皮膚バリア機能の研究も活発に進められており,アトピー性皮膚炎や乾癬といった慢性炎症性皮膚疾患に対する新たな治療法の開発は,今後もしばらく続いていくのでしょう.本号にご寄稿いただいた先生方には,臨床の現場で得られた貴重な経験や鋭い洞察,研究成果を,惜しみなくご共有いただき,誌面に厚みと深みを与えてくださいました.この場をお借りして心より御礼申し上げます.私自身,今回の編集を通じて多くの学びを得ました.何度も原稿を読み返しながら,自分の中にしっかりと知識を叩き込み,次の増刊号の編集にも全力で臨みたいと思います.

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