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1990年代,分子工学の進歩によりアレルゲンが次々と同定されたが,ここ10年余りアレルゲンとなりうる新規のprotein familyは発見されなかった.そのようななか,2013年,食物としては久々の新規アレルゲンが登場した.それがgibberellin-regulated protein〔GRP,別名:ピマクレイン(peamaclein)〕である1).GRPは生物学的に抗菌ペプチドに分類されるprotein familyである.奇遇にも,イタリアと当教室でほぼ同時期に発見され,モモアレルゲンPru p 7と命名された1,2).その登場からわずか3年足らずであるが,海外のみならず本邦でも注目を集めるようになってきた.その理由はGRPが果物アレルギーの中でも重症例を見極めるマーカーになりうるからである.これまで,日本では果物アレルギーの重症マーカーが同定されていなかったため,GRPは初めての重症マーカーアレルゲンとなる2).一般に果物アレルギーといえば,花粉との交差反応で発症する口腔アレルギー症候群〔別名:花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)〕が連想される.その診断根拠となるのが,交差抗原であるBet v1関連蛋白やプロフィリンへの感作の確認であった.当科の果物アレルギーの症例集積研究(対象100例)では,果物アレルギーの約80%はBet v1関連蛋白かプロフィリンのいずれかに感作されておりPFASであることを明らかにした.また残り20%のうち,65%はGRPに感作が認められ,PFASではない果物アレルギーにおいてGRPは重要なアレルゲンであることがわかった3).GRPアレルギーの臨床は特徴的であり,眼瞼の腫脹や喉頭絞扼感の出現頻度が高く,1名の患者が複数の果物アレルギーを示し,時に二次的要因が関与する食物依存性運動誘発アナフィラキシーの臨床型をとることもある.残念ながらGRPアレルギーでは,果物粗抗原に対するImmunoCAPの陽性率が低いが,診断には果物を用いるプリックテストが有用である.GRPという新規アレルゲンの登場により,これまで迷宮入りになってきた果物アレルギーの知られざる世界が解き明かされる可能性があり期待を寄せている4,5).
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