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あとがき
塩原 哲夫
pp.976
発行日 2015年11月1日
Published Date 2015/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204603
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好奇心は,“奇”を好む心と書く.筆者は子供の頃から好奇心が人一倍強かったせいか,いつも自分の考えが,まわりの人と違っていることを感じてきた.そのため,人前ではなるべく自分の考えを言わないという習性が身についてしまい,今でも人前で自分の考えを披瀝するのに常にためらいがある(そうは思わない向きも多いと思うが).
先日,正規の音楽教育を受けずに独力で世界的な作曲家になった武満徹氏の生前の映像が放映されていたが,それは好奇心に関して筆者が長年抱いてきた疑問を氷解させるものであった.彼は“自分は目に見えないものを見たいし,聞こえないものを聞きたいと思う.ある人の絵を見ていると,聞こえないものが聞こえてくるから好きなのだ”という趣旨の発言をされていた.そのとき筆者は,見えないものを見たいと思う心こそが好奇心なのであって,別に“奇”を好む訳ではないということを改めて認識したのである.筆者と同世代の映画監督にスティーヴン・スピルバーグがいるが,彼の作る映画はすべて筆者らの世代が少年の頃抱いた好奇心を具現化したものである.それは宇宙であり,恐竜であり,未来の世界などであり,昔の子供は皆このような好奇心の塊だった.
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