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文献紹介 皮膚炎症部への食物抗原の曝露はthymic stromal lymphopoieti(TSLP)と好塩球を介して腸管における食物アレルギー反応を引き起こす
熊谷 宜子
1
1慶應義塾大学
pp.1043
発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200054
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食物アレルギーは,原因アレルゲンを経口摂取することで発症する即時型アレルギーである.近年,皮膚における食物アレルゲンの抗原感作が,食物アレルギー発症の原因として重要視されている.しかし,実際に皮膚での抗原感作がどのような免疫学的機序で成立しているのかという点は完全には理解されていない.本論文ではビタミンD誘導体を用いて惹起した皮膚炎マウスの病変部皮膚における抗原感作の機序を,分子レベルで解析した.まず皮膚炎を惹起したマウスの皮膚に卵白アルブミン(ovalbumin:OVA)を曝露させ感作を成立させた後に,OVAを経口摂取させると腸管に肥満細胞の浸潤を伴うアレルギー反応が観察できた.同時に皮膚組織でのthymic stromal lymphopoietin(TSLP)の発現増加,抗原特異的なTh2サイトカインの産生,抗原特異的なIgEの上昇を認めた.一方,TSLPノックアウトマウスや好塩基球欠損マウスでは皮膚の炎症の程度が軽減し,引き続き生じる腸管アレルギー症状を含めた一連の表現型が観察されなかった.以上より,バリアが破壊された皮膚からの経皮的な抗原感作はTSLPと好塩基球を介した反応によって引き起こされており,炎症皮膚からの抗減感作が腸管食物アレルギーの機序に必要であることを示した.また,TSLPの産生や好塩基球の機能を抑制させることで,腸管アレルギーが軽減される可能性が示唆された.
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