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はじめに
感音難聴は頻度の高い疾患であるが,その病態はいまだ十分には解明されているとは言えない。約1,000の出生当たり,1人は言語習得前に高度難聴あるいは聾となり,しかもその半数は遺伝性とされている。これらの遺伝性難聴の原因遺伝子が,近年の分子遺伝学の発展で次々と同定されている。Waardenburg症候群やUsher症候群などがその代表例である。そして,特筆に値するのが,感音難聴の中で最も高頻度であり,難聴以外には他の臨床症状を示さない非症候群性感音難聴の原因遺伝子の解明である。この非症候群性感音難聴の原因遺伝子の解明は,難聴症例の大多数を占める原因不明の感音難聴の病態を知り,治療を試みるうえで貴重な情報を提供するものである。非症候群性難聴は,ヒト・ゲノム機構(The humangenome organization)で遺伝形式によって報告順に難聴遺伝子座が命名されている。優性遺伝はDFNA,劣性遺伝はDFNB,X連鎖遺伝はDFNである。インターネットで新しいデータが逐次報告されている(World Wide Web http://dnalab-www.uia.ac.be/dnalab/hhh/)。1999年12月の時点では,優性遺伝では31遺伝子座(重複を除くと30遺伝子座),劣性遺伝では28遺伝子座,X連鎖では6遺伝子座が報告されている。そして,ミトコンドリア遺伝子を含めると非症候群性感音難聴の原因遺伝子として,現在は17個判明している。この17個の遺伝子の中で,われわれは5個の遺伝子変異を独自に同定した。
マウスは,多くのヒト疾患の動物モデルならびに遺伝子同定に用いられている実験動物である。難聴遺伝子の解明にも,内耳奇形マウスが難聴遺伝子の同定の大きな役割を果たしている。われわれの研究では,内耳奇形マウスを用いて2個の難聴遺伝子を同定した。
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