Japanese
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第1土曜特集 五感を科学する――感覚器研究の最前線
聴覚
難聴の遺伝子治療
Gene therapy for deafness
池田 勝久
1
,
神谷 和作
2
Katsuhisa IKEDA
1
,
Kazusaku KAMIYA
2
1順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター耳鼻咽喉科学講座
2順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座
キーワード:
難聴
,
遺伝子治療
,
アデノ随伴ウイルス(AAV)
,
内耳
Keyword:
難聴
,
遺伝子治療
,
アデノ随伴ウイルス(AAV)
,
内耳
pp.677-681
発行日 2022年8月6日
Published Date 2022/8/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28206677
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難聴は最も頻度の高い感覚器障害であり,全世界で人口の5%(5億人)以上を占めている.先天性難聴はおおむね500出生に1人の割合で生じ,すくなくともその半数が遺伝子変異である.内耳に投与するルートとして,①正円窓経由,②半規管経由,③全身投与法,④中耳腔経由,⑤cochleostomy法などがある.マウスにおいては安全に正円窓または半規管経由で主にアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる遺伝子の蝸牛への導入が可能である.疾患動物の遺伝子治療のはじめての報告は,2012年にVglut3遺伝子欠損マウスを用いて成し遂げられた.遺伝子抑制による遺伝子治療の報告として,アンチセンスオリゴヌクレオチド,マイクロRNA(miRNA)が用いられており,CRISPR/Cas9による遺伝子編集技術の遺伝子治療も報告されている.ヒト難聴に対する最初の遺伝子治療の臨床試験が米国で2014年に施行され,ATOH1遺伝子を搭載されたアデノウイルスが蝸牛に注入されたが,治療効果に関しては乏しく,今後はAAVベクターの応用が待たれる.カプシド部位の技術革新などのウイルスベクターの開発,病態や疾患別の適切な投与時期の選択,安全で非侵襲な手術アプローチの評価を進めることで今後の飛躍的な発展が期待できる.
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