トピックス 結核と耳鼻咽喉科
2.院内感染症としての結核—対医療従事者・対患者
知花 なおみ
1
,
福島 康次
1
,
福田 健
1
1濁協医科大学呼吸器・アレルギー内科
pp.171-175
発行日 2000年3月20日
Published Date 2000/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902119
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はじめに
結核患者の減少に伴う患者,医師,医療従事者の結核への関心の低下,また拍車がかかる高齢化社会,そして一度も結核の曝露を受けていない若年者の増加,HIV感染などと,結核をとりまく環境は複雑になってきている。
1993年にWHOから「結核の非常事態宣言」が,また1999年7月には厚生省から「結核緊急事態宣言」が出された。その背景に,減少を続けていたわが国の結核患者発生率が1997年に43年ぶりに上昇に転じたこと,また全国各地から結核の集団感染といったニュースが報道されたこと,AIDS患者に合併する多剤耐性結核菌の話題など,いろいろな角度から再興感染症として結核がにわかにクローズアップされてきた事実がある。
空気感染である結核は,冷暖房が完備されあまり換気に重きがおかれていない現代社会の生活環境において,家庭,会社,病院,老人福祉施設,簡易宿泊施設,交通機関など,どこでも集団感染が起こり得る状況にある。またさらに,結核を昔の病気だと考え,患者側の受診の遅れ,また医療側の診断の遅れなど,その伝播をさらに助長させる現状がある。そのような現実をふまえ,結核を早く診断し適切な治療を行うことと同時に,結核感染を拡げないこともわれわれの大切な責務である。
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