トピックス 結核と耳鼻咽喉科
1.最近の結核菌感染について—高齢社会における感染の動向と結核の新しい検査の意義
佐野 浩一
1,2
,
矢野 郁也
3,4
1大阪医科大学微生物学講座
2神戸常盤短期大学衛生技術科
3日本BCG中央研究所
4大阪市立大学
pp.165-170
発行日 2000年3月20日
Published Date 2000/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902118
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
1999年7月に,厚生省が結核に関して非常事態宣言を出すに至った。1996年に33.7であった結核の罹患率(10万対率)が翌年には33.9に増加した1)。患者数にすると42,472名であった結核新規登録患者数が,翌年には42,715名に増加している。この数字は全数を把握しているとは限らず,集団感染や院内感染の報告が相次ぐ中で,医療関係者のみならず国民の結核に対する関心が高まれば,さらに増加する可能性がある。つまり,本邦における実際の罹患率はさらに高い可能性があるといえる。このような状態に至った原因は,国民の結核に対する意識の低下が受診を遅らせるpatient's delayと結核症診断の経験がない医師の診断遅延doctor's delayによるものであるとされている。さらに基礎疾患の治療のために,結核症が被覆されている場合など現状は単純に解決できるものではない。また,たとえ結核症と診断されても,患者が高度医療を必要とする余病を有するために結核の専門医がいる病院への転院ができない場合もあり,いかなる診療科の医師も結核症の診断法のみならず治療法をも把握しておく必要がある。
本稿では結核症の現状を簡単に解説したうえで,結核検査診断法について既存のものから最新のものまでを紹介することによって結核症診断・治療に当たられる読者の一助となりたい。
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.