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京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル医学生理学賞を受賞されました。1987年の利根川進氏,2012年の山中伸弥氏,2015年の大村智氏,2016年の大隅良典氏に続いて5人目です。体内の異物を攻撃する免疫細胞の一種であるTリンパ球の表面に発現している「PD-1」という分子とその遺伝子を発見し,その分子が免疫の働きを抑えるメカニズムを解明して,免疫チェックポイント阻害薬の開発に貢献したことが受賞理由です。ちなみに,本庶先生は2013年に文化勲章も授与されていますが,このときはウイルスや細菌などの病原体に対してBリンパ球が最も適した抗体を作る仕組み「クラススイッチ」の理論を提唱し,抗体が作られるメカニズムを明らかにしたことが評価されたものでした。どちらも免疫に関することとはいえ,全く異なるテーマで医学・生理学の教科書を書き換える大きな成果を上げられていることは驚きです。
本庶先生は,ノーベル賞受賞後の会見で「論文に書いてあることを簡単に信じちゃいけない。ネイチャーやサイエンスに出ている論文でも9割は嘘で,10年後に残っているのは1割」と述べられています。基礎研究者を志す若者へのメッセージではありますが,臨床においても教科書に書いてあったことがのちに否定されることは沢山あります。これから耳鼻咽喉科・頭頸部外科を学んでいかれる若い先生には,教科書や先輩の言葉を鵜呑みにせず,本庶先生が優れた研究者になるための大切な要素として挙げられている6つの「C」,好奇心 (curiosity),勇気(courage),挑戦(challenge),確信(confidence),集中(concentration),継続(continuation)を胸に,臨床と研究に当たっていただきたいと思います。
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