特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅸ.腫瘍性疾患診療NAVI
5.中咽頭癌
菅澤 正
1
1埼玉医科大学国際医療センター頭頸部腫瘍科
pp.267-271
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102171
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Ⅰ 疾患の概説
中咽頭癌は頭頸部癌の約10%を占めており,わが国では年間1,500~2,000例程度発症すると推定されている。扁平上皮癌が大部分を占めるが,小唾液腺由来の癌も少なからず認められる。飲酒と喫煙が誘因であり,50~60歳代の男性が多く下咽頭癌同様,重複癌の頻度が高い。喫煙率の低下など,生活習慣の変化で頭頸部癌は減少が予想されるが,中咽頭癌は世界的に増加している。その理由として,中咽頭癌患者とpapilloma virus感染の関連が注目を集めている。1980年代に子宮頸癌におけるpapilloma virusの関与が明らかになり,頭頸部領域では口腔癌においても関連が示唆されていた。2000年代に入り,中咽頭癌の,特に扁桃癌の50%にpapilloma virus genomeが確認され,子宮頸癌同様16型が大半を占めていた。予防可能な性感染症の側面があり,sexual partner数がリスクファクターとなっていることなどが報告された1)。中咽頭癌の感染率も近年80%近くに達するとの報告もある2)。
治療面ではvirus関連中咽頭癌は放射線,化学療法に対する感受性が高く,治療成績は良好であることが明らかになった。一方,喫煙者では生存率改善効果が減弱することも明らかになり,中咽頭癌は,papilloma virus感染,喫煙状態で,high risk,intermediate risk,low riskの3群に分類できることが提唱された3)。わが国においても中咽頭癌とpapilloma virus感染の共同研究が行われ,ほぼ半数の症例で感染していることが報告されている4)。
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