特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅸ.腫瘍性疾患診療NAVI
4.上咽頭癌
遠藤 一平
1
,
吉崎 智一
1
1金沢大学附属病院耳鼻咽喉科頭頸部外科
pp.263-266
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102170
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Ⅰ 疾患の概説
顔面頭蓋の最深部でblind spotもしくはsilent areaと呼ばれる上咽頭に発生する癌は,頭頸部癌のうち数%を占める比較的稀な疾患である。しかし上咽頭癌はほかの頭頸部癌とは異なる病態を呈するため,その腫瘍特性を理解することが,診断・治療において重要である。民族的背景として中国南部,台湾,香港,シンガポールなどでは年間10万人当たり約40人と高罹患率であるが,わが国を含めほかの地域では年間10万人当たり約0.6人と低く人種差が著しい。また発癌成因にEpstein-Barrウイルス(EBV)の関連が強く,40~60歳代に多く発症する一方で,若年層にも発症者の頻度がほかの頭頸部癌より高い。上咽頭の構成粘膜は円柱上皮,扁平上皮が混在するユニークな部位であり,また両者の境界に移行上皮が存在し,特に分布が著明な後上壁,側壁のローゼンミューラー窩が癌の好発部位である。組織学的に低分化または未分化癌が多く,高転移性である反面,化学放射線療法に高感受性である。
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