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下咽頭癌の治療―現状と今後の課題
Hypopharyngeal cancer: My experience and future problem
菅澤 正
1
Masashi Sugasawa
1
1埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター頭頸部腫瘍科
pp.13-23
発行日 2008年1月20日
Published Date 2008/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101189
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Ⅰ はじめに
20年余にわたり,頭頸部癌の治療に携わってきたが,最近咽頭癌の増加が際立っている。主に,近年の人口の高齢化,アルコールの消費量の増加などの生活習慣の変化に起因すると思われる。そのなかで特に下咽頭癌は,近年の化学放射線同時併用療法の普及により,施設間の治療方針の差も大きくなっており,その治療成績もいまだ決して満足のいくものではない。また,下咽頭癌の手術治療の際,多くの症例で咽頭再建操作が必要になるが,筆者は1980年代から1990年代の治療法の変革期を経験することができた。局所皮弁,DP皮弁,大胸筋皮弁,前腕皮弁1)などを経て,1980年代後半からマイクロサージェリーの普及とともに遊離空腸移植2)が再評価され標準的治療として定着していった。筆者の研修医時代の教科書の記載によれば,下咽頭癌の5年生存率は20%弱で,根治治療に至らない症例も多く頭頸部で最も難治性の癌であった。遊離空腸移植術の導入により,大幅な切除範囲の拡大が可能となり,術後合併症も軽減し,経口摂取開始も早まり(8~10日間),入院期間も短縮した3)。その結果,手術適応症例の比率も拡大し,治療成績の向上に結びついている。しかしながらまだ癌専門施設においてもその5年生存率は40%前後で頭打ちになっており,音声機能温存の観点でもいまだに満足のいくものではない4)。教育病院の立場から,22年あまり標準的治療を心がけてきたつもりである。本稿では前任地を含めて200余例の治療経験から,現状での下咽頭癌の治療に対する現状と今後の課題について,筆者自身の感想,私見を含めて述べ読者諸賢のご批判を受けたい。
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