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2011年3月11日に発生した東日本大震災は国内観測史上最大のマグニチュード9.0を記録しました。地震と津波,火災によって多くの犠牲者と被災者が出ており,さらに発生した福島原発事故の影響は国内外に大きな課題を投げかけています。特に福島原発事故は震災後3か月を経過してもいまだ収束の見通しすらたっておりません。前回(83巻3号)の「あとがき」では昨年の異常気象について書きましたが,今回は国内観測史上最大の大地震であり,昨今の自然のあまりにも大きな力にただただ呆然として立ちすくむばかりです。改めまして犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに,被災された多くの方にお見舞いを申し上げます。原発事故の収束を含めて一日も早い復興をお祈りいたします。本誌の今年の増刊号は「感染症の完全マスター」ですが,その序で「人類と感染症との戦いにより多くの感染症が克服されてきたが,新たな感染症の出現や耐性菌などによる既知の感染症の再興により新たな戦いに臨まなければならない。まさに臨床の最前線では刻々と変化する現代の感染症に迅速かつ適確に対応することが求められているといえる」と書きましたが,折しも生牛肉(ユッケ)による病原性大腸菌O-111が原因の集団食中毒が大きな話題になっています。これもまた細菌という自然との新たな戦いといえます。人類は天変地異の災害という大きな自然と細菌やウイルスなどの生物という小さな自然と常に正面から向かい合わなければならない宿命にあるということだと思います。
さて,今月の特集は「こんなときどうする?―頭頸部外科編」です。頭頸部腫瘍や癌の手術や術後に生じるさまざまな問題を各領域のエキスパートに多くの臨床経験をもとに解説していただきました。手術に関連する「ヒヤリ・ハット」対策の新しいシリーズ企画で,これからも「耳科手術編」,「鼻科手術編」,「咽喉頭編」などの特集が続きますのでご期待ください。目でみる耳鼻咽喉科は「正中菱形舌炎症例」で大変きれいな病変の写真と病理組織標本で理解が一層深まります。原著の6編は「上腕末梢穿刺中心静脈カテーテルの有用性」や「甲状腺乳頭癌周囲臓器浸潤症例」をはじめどれも力作です。大地震後の何となく落ち着かない毎日ですが,ぜひ,ご一読いただきたいと思います。
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