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労働者の働き方改革が大きな社会問題となっています。労働基準法は,近代市民社会の契約自由の原則を修正し,労働者を保護する労働法の一つとして昭和22年に制定されました。しかし,本法施行後70年以上が経過した現在においても,多くの企業において労働基準法に対する重大な違反行為が行われていることが指摘されています。昨年6月に「働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律」が成立し,本年4月1日から大企業を対象に罰則付き時間外労働の上限規制が施行されます。中小企業は来年度からのスタートです。時間外労働の上限は,月45時間,年360時間が原則とされています(1日あたり2時間)。
医師に関しては現在,厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」で最終調整がなされています。また,日本医学会連合労働環境検討委員会は勤務医の働き方について検討し,医師は高度のプロフェッショナルな業務を行っており,またその業務の習熟のためには経験学習は不可欠であり,自己研修や生涯教育が必須な特殊性のある業務であるという観点から提言を取りまとめています。提言①:良質な医療の提供と医師の健康確保や生活との両立,提言②:実践可能な働き方改革への積極的な取り組み,提言③:医療提供体制全般の改革が必須,提言④:診療報酬改定などの国の責任,提言⑤:女性医師の労働環境改善のための社会的対応,がその骨子です。結論として,目標は現状とは非常に大きな隔たりがあり,国の主導で医療提供体制全般の早急な改革が必要としています。もっともなことで,業務総量が同じであれば時間外労働の上限規制によってマンパワーが足りなくなるのは当然のことですので,制度そのものの抜本的な改革を行って欲しいと思います。
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