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2015年1月に厚労省は認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)を発表し,認知症の危険因子の1つとして「難聴」を明記しました。その直後に米国大統領科学技術諮問委員会から「米国でも,難聴が高齢者の健康に与える影響についても調べており,補聴器を利用することで認知症などの病気を改善できないかなど調査を行っています。この問題に対して日米で解決策を検討したいと思っています」という連絡をいただきました。一方で武見敬三参議院議員を中心に学会,厚労省,補聴器工業会を含めた「難聴と補聴器に関する勉強会」が立ち上がり,これらの動きから「難聴と認知症,うつ病に関する国際シンポジウム」を開催することになりました。超高齢社会を迎え,高齢者の難聴に対する介入,特に補聴器の活用で認知症やうつ病の進行が予防できるか? がテーマです。1月15日に日経ホールで開催された国際シンポジウムでは米国のLin先生,フランスのAmieva 先生,そして日本からは愛知医大の内田育恵先生がそれぞれの国の状況について講演され,急遽参加されたWHOのChadha 先生がWHOの取り組みを紹介されました。また,その後のパネルディスカッションには厚労省から椎葉茂樹審議官,日本補聴器工業会からは赤生秀一副理事長,日本聴覚医学会から原晃理事長,そして日本耳鼻咽喉科学会からは私が参加して,主に今後の補聴器販売のあり方について議論されました。3月3日は「耳の日」,世界的にも「World Hearing Day」です。今年の第70回WHO総会では難聴の予防に対する新たなアクションプランが決議される予定で,今年は難聴の問題を世界的に討議する年になりそうです。
さて,今月号の特集は「女性と耳鼻咽喉科—診療のポイント」です。小池東京都知事に代表されるように女性の社会進出が望まれるなか,今回の国際シンポジウムでも主役の3人は女性でした。このように,これから社会的な活躍が期待される女性の健康維持は重要な課題です。今回の特集はまさに時代の要請を受けたテーマです。また,原著4編も力作揃いです。トランプ新米国大統領就任で全世界が混乱していますが,「耳の日」には是非,難聴の問題を考えながら本誌をお読みいただければと思います。
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