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緒言 太田母斑は顔面の三叉神経第1,2枝領域にみられる真皮メラノサイトーシスで,眼には強膜,結膜,ぶどう膜,隅角,眼窩脂肪組織,視神経鞘などに色素沈着をみる1,2)。太田母斑の多くは片側性であり,東洋人,女性に多く,18%に脈絡膜母斑がみられる2)。母斑は組織学的には,通常のものより大きく,形態も異なった非典型的なメラノサイトがみられ3),悪性化した症例も報告されている2,4)。脈絡膜母斑は網膜色素上皮と脈絡膜毛細血管板のため検眼鏡的には見逃されやすいが4),多くの太田母斑の症例には脈絡膜母斑あるいは脈絡膜の色素異常が存在すると考えられている。今回筆者らは,右側顔面の太田母斑症例にフルオレセイン螢光眼底造影(以下,フルオ造影)とインドシアニングリーン螢光眼底造影(以下,ICG造影)を行い,両造影所見に明らかな違いがみられたので報告する。
症例 58歳,男性。40歳時に緑内障を指摘された。緑内障の精査のため当科に紹介された。幼少時から右顔面の皮膚色素沈着があった。家族歴には特記すべきものはない。初診時の視力は右1.2(矯正不能),左1.2(矯正不能),眼圧は右22mmHg,左23mmHgであった。視野には異常なかった。右顔面には,三叉神経第1枝から第2枝領域に色素沈着があり(図1),右眼の結膜と強膜にはメラノーシスによる色素沈着をみた(図2)。左側顔面および左眼には異常はなかった。角膜,虹彩,中間透光体には左右とも異常はなかった。左眼限底には異常はなく,右眼の眼底は左眼に比べて全体が暗い色調であった(図3)。フルオ造影により,早期から晩期まで背景螢光を含めて両眼に違いはなかった(図4)。ICG造影では,造影早期から晩期まで,右眼は左眼と比べて,背景がびまん性に低螢光を示し,両眼に明らかな違いがみられた(図5)。
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