文庫の窓から
『脈経』
中泉 行弘
1
,
林 尋子
1
,
安部 郁子
1
1研医会
pp.1190-1193
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102335
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漢方理論の総合医学書
漢方の診察では四診といって望診・聞診・問診・切診を行い,それらすべてを結びつけて考え,証を弁(わきま)える。その最後の切診では脈を診るということが診察の中心となる。この診脈についてくわしく述べた古典が『脈経』(『脉經』)であるが,ただ単に脈について述べた本というよりは,脈という切り口で漢方の理論を述べ治療法を伝える総合医学書といえるようだ。
著者は古くより西晋(魏の出身という説もある),髙平出身の王叔和と言われている。魏の曹操のもと,医薬関係の最高職である太医令を務めた人物で,散逸しかけていた張仲景の医書(今の『傷寒雑病論』や『金匱玉函経』)をまとめたと伝えられていることは,先にご紹介したとおりである。『太平御覧』に引用された『養生論』に「王叔和,性沈静,好著述,考覈遺文,採摭群論,撰成脈経十巻,編次張仲景方論,為三十六巻,大行於世」とあり,医書編纂に情熱を傾けたことがうかがえる。おそらくは自らの地位をフルに利用し,集められるだけの資料を集めてこれらの書物をまとめ上げたにちがいない。
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