文庫の窓から
『千金翼方』
中泉 行弘
1
,
林 尋子
1
,
安部 郁子
1
1研医会
pp.376-379
発行日 2009年3月15日
Published Date 2009/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102643
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『千金方』の続編医方書
「翼」にはつばさで守る,という意味がある。そこから,この字を「たすける」と読み,翼翼(傷つけられぬようにかばうさま),輔翼(そばについてかばう)のようにも使われる(『学研新漢和大字典』)。『千金翼方』は『千金方』を補う目的で作られた書物である。
前回ご紹介した『千金方』の著者,孫思邈(?581-682)が,晩年に至って著わした続編,それが『千金翼方』である。これは『新修本草』成立以後の657年から681年の間に成ったと推定されている(参考文献3,小曽戸洋氏の説)。他の多くの有名な医書同様,この書物も北宋の林億らが校勘を行っているが,その時点で「今伝わるものは訛舛尤も甚しく,洪儒碩学でもこれを弁ずることはできない」というほど乱れた資料しかなかったという。宋の治平3年(1066)に『千金方』が刊行された後,『千金翼方』も手がけられ,今に伝わるものは皆この北宋版をもととしている。
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