文庫の窓から
『医宗金鑑』
中泉 行弘
1
,
林 尋子
1
,
安部 郁子
1
1研医会
pp.94-98
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103067
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清朝,乾隆年間に武英殿が刊行した『医宗金鑑』は最後の漢方医学全書といわれた書である。清朝の盛時に大学士鄂爾泰らが高宗の勅命を受け,国家的規模で編成した近世中国医学の代表的医書である。総計90巻のこの医学書を実際に纏め上げたのは医官の呉謙らで,医家の実用を主旨として編集され,最初に『傷寒論』『金匱要略』という基本書をおき,後に図,説,歌訣でわかりやすく解説している。
その明解さは『四庫全書提要』において評価され,「学者をして考究し易く,誦習に便ならしめてある」と書かれている。こうした実用書が望まれた背景には,「聖済総録や和剤局方などの官選医書もただ博いだけで要は少なく,或は偏して中を失い実際の治療に裨益するものではない」ということがあったためで,日常の臨床の際に役立てることを考えれば,単に網羅してある医書では扱いに手間取るため,わかりやすく覚えやすい医学書が望まれていたのであろう。
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