文庫の窓から
『霊枢』
中泉 行弘
1
,
林 尋子
1
,
安部 郁子
1
1研医会
pp.2070-2072
発行日 2007年11月15日
Published Date 2007/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102082
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漢方医学の根本経典
『黄帝内経霊枢』略して『霊枢』は『九巻』,『鍼経』,『九霊』,『九墟』とも呼ばれていた。『黄帝内経』という書物が紀元前26年までに宮廷医,李桂園によってまとめられ,それがいつの頃か『素問』と『霊枢』という2つの書物へと再編された。その時期は明らかではないが,2世紀の初めから3世紀の中頃と考えられている。晋の皇甫謐(214-282)の『甲乙経』と唐の王冰の『黄帝内経素問』の自序(762)にもこの2つの書物のことがそれぞれ語られ,『霊枢』は『素問』と並び古来漢方医学の根本経典として知られている。
しかし,唐末からの混乱の時代を経ると『霊枢』は散失してしまう。そこで,北宋に至って高麗より献じられた『鍼経』を『霊枢』とした(1093)。さらに南宋の世になった1155年,再び散失の危機に瀕していた『霊枢』を史崧(しすう)が新たに校正して24巻81篇として刊行する。『現代語訳 黄帝内経霊枢』(東洋学術出版社,1999)の監訳者白杉悦男氏によれば「現行の『霊枢』は全てこの史崧のテキストに基づいている」という。
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