Current Research
精子先体反応の調節機構
遠藤 芳広
1
,
小松 節子
2
,
古屋 悟
2
,
木村 裕幸
2
,
鈴木 秋悦
2
Yoshihiro Endo
1
,
Setsuko Komatsu
2
1立川共済病院産婦人科
2慶応大学医学部産婦人科教室
pp.349-356
発行日 1991年3月10日
Published Date 1991/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904927
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Ⅰ.はじめに
精子は成熟過程およびその後の受精過程において,多くの生化学的あるいは形態学的変化を呈し,それらは精子—卵子相互作用を成功させるための必須条件である。それらのいくつかは生殖器官液,卵子周辺の細胞性あるいは無細胞性成分,卵子自身に含まれる諸因子の影響により発現すると考えられている1)。そのなかで,先体反応はもっとも顕著で特異的に起こる連続的な膜変化であり,精子が透明層(帯)を貫通し,さらに卵子細胞膜と膜融合するために必要な現象である2)。先体反応は,卵子を取り囲む透明層に到達する以前に起きているのか,あるいは透明層上で誘起されるのかという問題は,種による相違もあり,いまだ解決されていないが,透明層が生理的な先体反応誘起作用を持つことは疑いのない事実である2)。
マウスは先体反応調節機構の解明のためにもっとも適したモデルである。マウスでは先体を完全に有する精子のみが透明層に結合でき,その後,先体反応が透明層上で誘起されることが確認されており,さらに透明層糖蛋白質の一つであるZP3に精子レセプター活性と先体反応誘起活性が証明され,生理的ligandであるZP3と精子との相互作用により細胞応答としての先体反応が発現すると考えられている3)。
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