New Sexology
母乳哺育—桶谷そとみの世界をのぞく
大島 清
1,2
1京都大学
2愛知工業大学
pp.358-359
発行日 1991年3月10日
Published Date 1991/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904928
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医療施設の医師たちは,欧米の轍を遅ればせながらふむことによって今でこそ母乳育児へと傾斜している。しかし,戦後,ミルク哺育が隆盛を極めていた頃から,母子の肌のふれ合いという身体の接触が,精神的な結びつきに発展して,赤ちゃんの脳の発達に大きく寄与するという「母子一体の原理」(助産婦雑誌,32:6,1978)をもとにして,もう年40以上にわたって母乳育児を推進してきた助産婦がいる。その名は桶谷そとみ。
桶谷そとみの理念は「ヒトは哺乳動物なのだから母乳は必ず出るもの,出せるもの」という信条である。人間は脳を巨大化した分,環境からのさまざまなストレスを受け易く,それが乳汁分泌のしくみにマイナスの信号を送ることになる。更に,己れ自身が作り上げる幻想,つまり文化の影響も軽視できない。
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