特集 現代医学・生物学の仮説・学説
3.発生・分化・老化
受精―先体反応
大浦 親善
1
1宮崎医科大学
pp.488-489
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900618
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概説
生命の営みの一つである生殖は,卵子と精子の合体により行われる。哺乳動物による受精の現象は,一般に生体内で行われることは周知の事実である。受精に関する形態学的,そして生理学的研究の結果は非常に多く報告されてきた。しかしながら,また不明の点もかなり多く残されている。本稿の説明の都合上,精子頭部と卵子について概略を述べ,次いで,精子が卵子に接近し,そして卵子透明帯を貫通し囲卵腔に進入するまでの過程で,とくに精子頭部に惹起される「先体反応」に注目したい。
哺乳類の成熟精子頭部の形態は,種により相違するが,基本的には,核(nucleus)と先体(acrosome)と先体後域(postacrosomal region)から構成される。そのうちの先体はヒアルロニダーゼやアクロシンなどの酵素を含み,「先体反応」の際に放出される。先体は先体内膜と先体外膜で包まれ,これらの膜は先体赤道部の後縁で連続している。先体内膜は核膜に相対し,先体外膜は先体内膜とほぼ同じ領域の細胞膜の直下にある(図1A)。
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