リプロダクシヨン
精子について
鈴木 秋悦
1
1慶応大学医学部産婦人科
pp.68-69
発行日 1971年8月1日
Published Date 1971/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204195
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精子の運動
睾丸で形成された精子は,副睾丸から精管を通って射精される。精子は副睾丸のなかでさらに成熟を進め,副睾丸の尾部と呼ばれる部分に無数の精子群となって,ひしめき動いている。その部分からの精子をとり出して,その運動の様子を16mmの映画撮影でとると副睾丸内精子の運動は,直進運動ではなく,回旋運動で,ぐるぐると回りながら動いていることがわかる。それに比較して射精された精子は,そのほとんどが直進運動をとって真直ぐに動いている。射精精子と副睾丸内精子の運動性の相違は,精子の生物学的な働きを理解する上でも,非常に重要な現象である。
一般に,腟内に射精された精子は,直ちに子宮頸管内の頸管粘液と呼ばれる透明な粘稠性のある分泌液の中に入っていく。頸管粘液は,ホルモン,とくに卵胞ホルモン(エストロゲン)によって増加してくるもので,排卵の時期には,その量も最大となり,水様性となって精子が貫通し易く変化していく。頸管粘液と精子の関係は,不妊症の原因を知る上でも重要であり,精子がそこを通ることができるか,否かを検査するフーナー検査法が臨床的にもさかんに応用されている。排卵の時期に,精子が,最も容易に頸管粘液の中を通り抜けることができるということは,妊娠の機序を理解する上でも非常に興味が深い。
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