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Ⅰ.細変動の実際
前項に述べたように,コンピュータを用いないで細変動を評価しようとすると,当然長期細変動(LTV)についてである。その際にも,記録方法は原則として,胎児の心電信号による瞬時心拍数図で評価されなければならない。したがって,通常,内測法による胎児先進部に装着したらせん電極か(図1—a,b),外測法による母体腹壁誘導から得られる胎児心電信号を用いた瞬時心拍数図が用いられることになる。しかし,最近ではドプラ法によるものでも,自己相関型心拍数計を用いれば,内測法による記録とほとんど同様の記録が得られるとして臨床的に細変動の評価に用いられることもある。特に細変動の消失している場合の評価では,その精度も一層高い。
細変動の成因は自律神経中枢にあると考えるのが一般的であったが,さらに上位中枢の関与が考えられるとする説もある10)。いずれにしても胎児の一種の予備能の指標と考えることはできよう。細変動の成因は十分解明されていないが,その低下をきたす因子は種々あげられている。胎児低酸素症があっても,既述のようにアシドーシスを伴わない一過性の場合は,細変動は増加するが6),アシドーシスを伴うようなfetal distressの場合は低下する。胎児の生理的な状態のうち,妊娠早期,生理的睡眠状態では,細変動が低下しているとされる。また各種薬剤が細変動の低下をきたすことが知られている。それらのなかには,アトロピン,スコポラミン,ジアゼパム,プロメタジン(ヒベルナR,ピレチアR),その他の鎮静剤,麻薬などがあげられている。子癇前症,子癇に用いられる硫酸マグネシウムも中枢神経抑制作用があることから,細変動の低下11)を認めるほうが妥当と考えられるが,半数から2/3の患者でしか細変動の低下は認められなかったとの報告も12)ある。
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