臨床メモ
妊娠中毒症と減塩食
竹内 久弥
1
1順天堂大学産婦人科
pp.502
発行日 1974年8月10日
Published Date 1974/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205058
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いわゆる晩期妊娠中毒症の予防や治療に減塩食が重要視されていることはいうまでもない。しかし,この考え方は現在でも全く疑うべき余地のないものではなく,たとえば正常妊婦は,胎児,胎盤,羊水や全血量の増加,子宮や乳房の肥大などのために多量のNa貯留を必要とし,中毒症そのものがNa欠乏状態に対する反応現象ではないのかという考え方も現われている。
Foote and Ludbrook (New Zea—land Med.J.77,242,1973)は上の仮説が正しいとすれば,むしろ高塩食が治療上有効と考え得るところから,これを実地に応用して,その母児への安全性を検討した。対象は純型重症中毒症でとくに高血圧のあるものと,重症中毒症ではないが本態性高血圧症と判定されたものの2グループである。方法は入院の24時間前からphenobarbitone 30mgを1日3回,nitrazepam 5mgを就寝時にそれぞれ経口投与し,1週間の入院期間中継続した。入院中の歩行制限はしなかつた。入院第1日は常食を与え,第2日以降は常食に加え180mEq.(約10g)の食塩を摂取させ,分娩に至らず退院した場合は自宅でもこの高塩食を続けさせた。血清クレアチニン,Na, K,尿酸,尿素レベルは入院時から高塩食継続中,全例とも正常範囲にあつた。
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