総合講座 産婦人科と肝機能
妊娠と肝機能
百瀬 和夫
1
,
大村 剛
1
,
岡田 研吉
1
,
岡本 善隆
2
,
森本 敬三
2
Kazuo Momose
1
,
Yoshitaka Okamoto
2
,
Keizo Morimoto
2
1東邦大学医学部産科婦人科学教室
2都立荏原病院産婦人科
pp.529-534
発行日 1974年8月10日
Published Date 1974/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205062
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肝臓の機能はきわめて複雑で,今日の多数の臨床検査法をもつてしても,その一端をうかがい知るにすぎない。妊娠にともなう物質代謝の昂進,とくに"ホルモン漬"と表現されるような高い値,第2の肝ともいえる胎盤の存在は,妊娠時肝機能の解明を著しく困難にしている。妊娠末期においては肝の機能は最大限に近く発揮され,ようやくバランスがとれているのではなかろうか?いくつかの検査法でその測定値が正常の上限に近く,あるいはしばしばこれを越えていることからもうかがえよう。わずかな負担,たとえば貧血,栄養障害,高血圧,薬物中毒,感染などにより肝機能—代謝の平衡は破れ,急激な崩壊に至る可能性がある。
妊娠は生理的現象の一部に加えられているが,ここには病的状態への急速な移行の危険性が常に存在することを忘れてはならない。全く健康と思われていた妊婦が数日の経過のうちに母児とも非命の道をたどることはしばしば経験されるところである。以下,妊娠時における肝機能および黄疸について,近年の知見をまとめてみたい。
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