今月の臨床 これを読めばすべてわかる―最新の産婦人科超音波診断
IV 産科における超音波診断─妊娠中・後期
[胎児の正常超音波像と形態異常]
6.四肢骨格の超音波像―四肢長管骨が短いときに何を疑うか
室月 淳
1,2
1宮城県立こども病院産科
2東北大学大学院先進発達医学講座胎児医学分野
pp.612-617
発行日 2010年4月10日
Published Date 2010/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102346
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胎児骨系統疾患の診断の端緒のほとんどは,ルーチンの超音波計測によりみつかる大腿骨長(femur length : FL)の短縮である.高次周産期施設への紹介病名の多くが「胎児四肢短縮症」であることからもそれが伺われる.しかし大腿骨短縮の超音波所見は胎児骨系統疾患だけを意味するわけではなく,子宮内発育遅延(intrauterine growth retardation : IUGR)や染色体異常胎児のこともあり,さらにはときに正常胎児にすら認められることがある.
仮に何らかの胎児骨系統疾患の可能性が高いときにはすでに提案された診断アルゴリズムにしたがって精査を進めていくことになる1, 2).今日ではさらに胎児CTも臨床応用さるようになった.もし何らかの胎児骨系統疾患が間違いないのであれば,骨系統疾患の出生後のX線学的診断学はほぼ確立しており,その知見の応用により胎児CTによる正確な診断が期待できる.しかしそれが単なるIUGRであれば,結果的に無用なCTの被曝によって生じるリスクを将来にわたって負うことにもなりかねない.
本稿では,胎児骨系統疾患であるか,IUGR,染色体異常かの判断に迷う境界領域である-4SD前後の大腿骨短縮症例の鑑別を中心に解説を行う.FL短縮が境界領域にある症例に対して,超音波診によって骨系統疾患であるかないかをきちんと評価できるかは非常に重要な課題と考えられる.
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