今月の臨床 これを読めばすべてわかる―最新の産婦人科超音波診断
IV 産科における超音波診断─妊娠中・後期
[胎児の正常超音波像と形態異常]
5.泌尿生殖器の超音波像─腎臓・膀胱・外性器など
吉田 幸洋
1
1順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科
pp.604-611
発行日 2010年4月10日
Published Date 2010/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102345
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■腎・尿路系の正常像
妊娠中,胎児の腎臓の機能はもっぱら尿を産生することにある.胎児の尿産生は妊娠10週には開始され,妊娠20週ごろまでには腎臓を含めた尿路系は構造上の発生段階を終えるが,機能的には妊娠36週ごろに完成に至る.
この胎児腎・尿路系の発生過程は,妊娠中の超音波画像所見として捉えることができる.超音波経腟走査法によれば,胎児の腎臓は妊娠10週ごろから認識できるようになるといわれている.この時期に観察される胎児腎臓は高輝度で長楕円形の腫瘤像を呈しているが,妊娠14週ごろには,やや高輝度の皮膜を有するやや低エコーの腫瘤像の中央部分に,腎盂がエコー・フリー・スペース(EFS)として認められるようになる(図1).さらに妊娠後半期になると,腎実質部分に低エコーで嚢胞のような領域が認められるようになる.これは腎錐体部分に一致しており,この部分が周囲の腎実質に比較して低エコーに描出されることによる(図2).腎盂の大きさの正常範囲については明確な基準がないが,妊娠30週以降では,胎児の腰部横断像で腎盂の前後径が最大に描出される断面でのEFS部分の幅が7~10mmを正常範囲とするものが多い(図3).
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