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「嗚呼」,巷に広がる嘆きの声
2022年7月8日,職場である医科歯科大学病院の自室,いつものように昼食を摂りながらメールに目を通す.朝チェックしたばかりなのに,もうこんなにたくさん…….その時,廊下の方から秘書の声,「アベさん……うたれた……」 独り言? それともこちらに言った?「どこのアベ,ナニしたって?」と壁越しに聞き返す.書棚の向こうから秘書の青ざめた顔が目に入る,「安倍元首相が,演説中に銃撃されたそうです.医局のテレビの前に皆集まってます」「エッ!!」走ってテレビの前に行くと,現場からの生中継,黒山の人だかりが目に飛び込む.事件現場は大混乱,間から倒れている人の影,白いシャツと黒っぽいズボン,これ安倍さん? 心マしてる? ……足を持ち上げてる? ……体は完全に弛緩して……「11時31分銃撃,極めて厳しい状況」とのアナウンスが繰り返される.さすがに医者であれば,どれほど重傷であるかはすぐわかる.どこのチャンネルも関連報道一色,ほどなくヘリで奈良県立医大へ救急搬送.しかし治療の甲斐無く,同日17時3分に死亡が確認されたとの報道.
当日何度もテレビ画面で繰り返される銃撃の場面.「安倍晋三でございます!」埋め尽くす聴衆の目前で演説台の上に凜と立ち力強い第一声,貫禄に満ちた顔とともに大演説が始まる.変わらぬ安定感! ところが少し経って突如の耳をつんざく爆発音,瞬間空気が揺れカメラと群衆がビクッと動く,だが安倍さんの表情は不変,直後その顔はパニックに陥った人々の頭の影に隠れ,数秒後に2発目の爆発音.状況を掴みかねたカメラに飛び込むのはSPに押し倒される男の姿と周囲の悲鳴,数秒後カメラが演台に向いた時には安倍さんの姿はなし,飛び交う怒号と悲鳴,「救急車!救急車!」.
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