増刊号 手術ステップごとに理解する—標準術式アトラス
5 肝臓
亜区域切除—腹腔鏡下S8亜区域切除
阿部 雄太
1
,
篠田 昌宏
1
,
北郷 実
1
,
八木 洋
1
,
日比 泰造
1
,
大島 剛
1
,
板野 理
1
,
北川 雄光
1
Yuta ABE
1
1慶應義塾大学外科
pp.208-215
発行日 2017年10月22日
Published Date 2017/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211813
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Step1
亜区域切除のキモ:把握すべき解剖について
右葉前区域は下区域をS5,上区域をS8と分ける.しかし,前区域グリソン本幹より末梢の分岐はバリエーションが多く,S5とS8を分けることは時に困難である.たとえば前区域下領域(S5)への枝が複数存在したり,あるいは上区域腹側枝(S8vent)の第1分岐としてかなり末梢から分岐することもある.またS8の頭側背側領域のグリソンは,時に前区域グリソンから早期に独立して分岐(あるいは肝門部から直接独立して分岐)し,あたかも尾状葉枝のようにみえることもある(図1).解剖学的切除の目的は主に肝細胞癌の担癌グリソン領域を系統的に切除することであり,Couinaud分類で定められた領域を切除することではない.よって個々の患者のグリソン分岐パターンを事前に認識し,担癌グリソン根部への効率的なアプローチを計画してそれを実践する必要がある.この点において,亜区域切除のなかでもS7とS8は最も難しい.上記理由よりS8亜区域切除手技は画一的ではないため,本稿の手技は必ずしも標準術式とは言い切れないことを事前に断っておく.
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